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07/01
終章:夕日がくれたもの
(じりり・・・)


―――朝。

目覚ましの音で目を覚ます。

いつもと変わらない、でも決定的に違う朝。






・・・涙を流している自分がいた。

理由は分からない。

覚めてはいけない夢から覚めた気がして、ただ、悲しかった。








もう、隣の部屋には誰もいなかった。

いや、初めからいなかったのだ。







「妃優・・・」







僕しかいない家でその声だけがこだまする。







「妃優!」






僕の発した声に意味はなく、ただ壁に消えていくだけ。

それでも僕は叫んだ。

叫ぶしかなかった。

ただ一人の女性の名を。

だた一人好きな人の名を。









返事がないのは分かっている。

でも、それを認めたくなかった。


夢にしてはあまりに鮮明で、現実にしてはあまりにはかないその事を。








「妃優!!!」









僕はもう立っていることさえ出来ない。

この残酷な結末を受け入れるには、僕はあまりに無力で、あまりに弱かった。









でも僕は現実からは逃れることが出来ない。

学校に、仕事に行かなくてはならない。

・・・でも、級友も、教員も、誰も僕が探しているものを持っている人はいなかった。








心のカケラが見つからないまま帰る道を行く。

空はうっすらと紅に染まっていた。


すれ違う人影も、夕焼けさえも、僕の目に映ることはなかった。









家の鍵を開ける。

いて欲しい人はいない。

出迎えて欲しい人はいなかった。








僕の部屋は夕日で紅く染まっていた。






「あぁーーーー!!」





なぜ僕は悲しいのだろう。

初めからいない人が、ただいないだけなのに・・・。









夢。

それは僕の中だけに存在する物語。

僕以外には語られることのない詩。

始まりも、結末も、僕自身が書き記す。


でも・・・それは自分が望む結末になるとは限らない。

毎日生まれては消えるその物語は、いつもハッピーエンドとは限らないんだ。








・・・


夕焼けの光が僕を包んでいた。

温かい。






(ピンポーン・・・)





その時玄関のチャイムが鳴る。

何も考えられない頭で玄関を開けた。


・・・紅に染まる世界の真ん中に一人の女性が立っていた。








「今日からこの家で暮らすことになった、妃優です。

 どうぞ宜しくお願いします!」






夕日が飾る僕の物語は、また、こうして紡がれていく。



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[] 2006/12/29(金) 01:07 [EDIT]

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